3次元曲線の離散化について
ちょげん
曲線を離散化する際によく使われる方法は折れ線で近似する方法である.
もっと良さげな方法を思いついたのでメモする
0. フレネの公式
離散化はフレネの公式をベースにするためその簡単な解説から始める. フレネの公式は曲線に関する3つのベクトルの変化についての公式である. 3つのベクトルの1つ目は接線ベクトルである.接線と同じ方向で大きさが1となるベクトルである.2つ目は主法線ベクトルである.これはの変化方向を向き大きさが1となるベクトルである.3つ目は従法線ベクトルであり,これは,の両者に直交し大きさ1のベクトルである.この3つのベクトルは基本的に直交しており(直交を説明するにはより厳密な定義が必要),少なくとも独立している.フレネの公式は曲線上の各点で
が成り立つ法則である.ここでダッシュ記号はについての微分を示し,はそれぞれtについての実数値関数で速度,曲率,捩じれ率と呼ばれる.
1.曲線のテイラー展開
曲線がで定義されており,この区間を速度,曲率,捩じれ率がそれぞれ一定と見なせる程細かく区分する.その区間の幅をとする.
この時,曲線を周りにテイラー展開すると,
となる.ここではのk回微分係数であり,これを求めることでが求まる.その導出にフレネの公式を用いる.
2.の導出
は大きさがで向きがのベクトルなので
となる.検討している区間ではがそれぞれ一定なので
である.はフレネの公式より
となる.同様にして
となる.これをそれぞれ代入して
となる.Nの係数は
とでき,として,
である.の係数は
である.まとめると,
が得られる.
3.でのフレーム
の計算では媒介係数でのフレームが既知である前提で議論した.実際には求めたをに代入しを求め,これを繰り返すことで目的の曲線を得る.そのためには媒介係数の段階でにおけるフレームが得られなければならない.本節ではそれを求める.
前節では以下の式を得た.
これは媒介係数をとした曲線と見ることができる.またの係数を取り出し,
は座標軸をとした座標系における曲線と見ることができる.
はを通り,接線方向を向き,大きさが1のベクトルである.
接線方向は
である.大きさは
よりである.これよりが前提である「領域内での速度はで一定」と矛盾しない事が確認された.またを大きさ1にするため,をで割って,は
である.はの変化方向で大きさが1のベクトルであるため,の微分は
である.大きさは
よりであり,として,
である. ちなみに大きさは
と確かに1である.また,との内積は
より直交している事が確認できる. はとの両方に直交しているベクトルなので外積を使い,
である.ちなみに大きさは
より確かに1である.
4.まとめ
以上の議論をまとめると,は
であり,は,
である.
これを曲線を求める計算に利用する事を考える.そのためにフレームの式の係数をまとめて,
とする.ちなみにこれは特殊直交行列となる.これよりフレームの式は
となる.ここでフレームをまとめてとした.また,
とすると,は
と表現できる. 区間をそれぞれ速度,曲率,捩じれ率がそれぞれ一定と見なせるような領域になるように媒介係数を個に等分割する.1つの領域の幅は
である.ここでである.領域の境界点は
である.この時微小領域は
内 と表記できる.内でのパラメータを,,で与えられるとする.また,初期位置,初期フレームは与えられるとする. i番目境界点でのフレームは
と書ける. また曲線は
となる.これをi=1からnまで繰り返し計算することで離散化された曲線を得られる.
謝辞
このブログページを作製するにあたり,自前の環境での数式からはてなブログの数式へ変換するためano3様のこちらのツールを使用させて頂きました.非常に有用なツールをありがとうございます.
参考文献
微分幾何の勉強はこれでしました.
Neill, Barrett. Elementary differential geometry. Burlington, MA San Diego, CA London: Academic Press, an imprint of Elsevier, 2006. Print.
https://www.amazon.co.jp/Elementary-Differential-Geometry-Revised-Second/dp/0120887355
英語で長く比較的丁寧に書いているのでフレネの公式だけについて知りたい方はwikipedia等のページを参照することをお勧めします.
一方で微分幾何について応用するのに十分に理解できるので時間がある方には一読をお勧めします.